ラヴ・ラヴァーズ・キス
「翔、翔もほら、お前が一番瑞葉ちゃんと歳が近いんだから、ほら、挨拶しなさい!」

ぼさぼさ頭のお兄さんはふいと視線を私に向けた。

眼鏡越しの目力は、半端なく、突き刺さるように・・鋭い。

いや!

良いですよ、別に!

挨拶なくても!

「ほら、髪を直して。」

義父はおかまいなし、というかいつものことで慣れてるからなのか

つかつかと息子さんに近付いて言う。

「うるせぇ。」

ぞくり・・・

痺れるような低音ボイスで答えて、ふいと私から顔を背けた。

こわっ

怖いですけどっ!

ガタン

ボサ頭のお兄さんが椅子を鳴らして立ち上がり、私は思わず身を固くして身じろいだ。

「兄貴、自由人~。」

へらへらと笑って言う弟くんの方に更にイラッとさせられる。

けど、怖いお兄さんが近付いてきて

私は、硬直して身構えた。

「こら、翔!」

義父の声にも足を止めずに、私の隣を通り過ぎる瞬間・・・

ふいと私を見遣った。
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