七月の魔法使いと黒猫
町行く人が、時々、路地に座りこむわたしに気づいて、目線をくれる。
ま、くれるったって、食べ物や一晩の宿をくれることはない。
見ず知らずの汚い子供にくれてやる、親切なんてないんでしょうね。
気持ちはわかるわ。
むしろ、親切をお菓子をあげるように振り撒いてくる人の方が怪しい。人の親切には必ず、裏があるもの。
でもねえ。
お腹に片手を当てて、首をたれて、ため息。
そんな裏のある親切でも、頂きたいわけよ、今のわたしは。
水筒の中のお水はとっくにつきてしまって、食べ物だって、明日のぶんがあるかわからない。
いくらお腹がすいてたって昼前。まだ夜には遠い。食べるわけにはいかない。
パンの一切れでもいいわ……あと、お水一杯。
食べ物を食べたら、少しは動く気がわく。
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