Hazy moon night
ずっと母親の言う通りに弾いてきたのに、どれだけ頑張っても、結果を出しても、一度も認めてくれなかった。

いつしかハヤテは、母親に認めてもらう事をあきらめ、誉めてもらう事を望むのをやめた。

それなのに母親から教わったピアノだけが、皮肉にも唯一の取り柄である事が、ハヤテにとってどこまでも逃れる事のできない、まぎれもない事実だった。

(今度のコンクールで最後にしようかな…。)

一緒にバーで飲んだ帰り道で父親が言った言葉が、何度も頭を駆け巡る。


“今まで散々遠慮して、人のために弾いてきたんだから、そろそろ自分の進むべき道を自分で考えて選んでもいいだろ。”



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