Hazy moon night
ライブハウスのカウンター席では、若い観客から逃れるように大人の男二人がグラスを傾けていた。

ギムレットを飲みながら、ハヤテの父親のタカマが呟く。

「この曲、確かチーちゃんが結婚する時…。」

「ハタチになってすぐだったな…。この曲でカミさんにプロポーズした。」

タカマの音楽仲間でもある“チーちゃん”こと和泉 知絋は、世間では“ヒロ”と言う名で知られている実力派人気ミュージシャンだ。

ヒロはタバコに火をつけながら、懐かしそうに目を細めた。

「オレの唯一のストレートなラブソングだ。」


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