Hazy moon night
幻みたいなものだといくら思っても、胸をしめつける激しい痛みが、紛れもない現実なのだとハヤテの心に思い知らせる。

(もう2度と会わないんだから…そのうち忘れるはずだ…。初めて本気で恋をした事も、メグミとの想い出も、何もかも…。)



遅咲きのハヤテの初恋は、なんの前触れもなく訪れて、なんの前触れもなく終わった。

終わった恋には、次に会う約束も、優しいキスも、甘い言葉も何もない。

ハヤテの胸に、果たされなかった約束と、大事なものを突然失った虚無感だけが残された。



その日、ハヤテは電車を降りてまっすぐ帰路に就き、メグミは泣きながら歩いて帰宅した。



そしてその後も、二人が会う事はなかった。



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