Hazy moon night
(オレは卑怯だ…。)

ロンドンに行くと決めた事も、メグミを連れてはいけない事も、何も言い出せないまま時間だけが過ぎて行く。

メグミの顔を見ると決心が揺らぎそうで、会いたくてもできるだけ会うのを我慢してきた。

本当はできるだけ長く一緒にいたい。

もうすぐ別れを切り出すのに、今だけは何もかも忘れてそばにいたいと思う。


“春になったら…”


春には、自分はもうここにはいない。

何も知らないメグミは、二人の時間がずっと続くと信じているはずだ。

いつかと立場が逆になって初めてハヤテは、好きだから少しでも長く一緒にいたくて、話を切り出せなかったメグミの気持ちが、痛いほどわかった。

(言わなかったんじゃない…。言えなかったんだ…。)

ハヤテはメグミを強く抱きしめながら、できる事ならこのまま離したくないと、強く思った。




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