あのころ

正月

正月、克英を交えて久しぶりの賑わい。克英はこの義兄夫婦の一人息子で
私とは2つ下。東京の私大に在学中でS学会の学生部員だ。

君子姉さんは家族を早くに亡くしてここの義兄が引き取った。
私より7つ年上だ。3人は兄弟のように育った。

私が高校卒業までの5年間、毎朝早くにおきて弁当を作ってくれた。
私は京都へ。克英は東京へ。久しぶりに全員会えると思っていたが、

君子姉さんは迎賓館、義兄が料理長をやっててそこで君子姉さんも働いていた、
そこでスキャンダルを起こしてどこかへ駆け落ちしたらしい。

とてもいい姉さんだったのに。人のうわさは聞いてはいるが
向こうから来ることはないと義姉さんは言う。

「克英、そういう人を救うために信心があるんじゃないのか?」
「そのとおり。数多くの宿命に泣く人々を救済できる力ある宗教はこれしかない!」
「ならばお前が出向いていって折伏すればいい」
「兄貴がそういうのなら、まず兄貴自から信心を始めてみるべきじゃないか」
「ふむ」
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