探求者たちの苦悩




 そうだった。
 いまだに男雛も女雛も隠れたまま。
 着物の裾すら見ていない。


「でも、打つ手がないわけじゃない。力の影響を受けている人間を媒体として、そこから間接的にエネルギーを取り出すことは可能よ。
 ここにあるコンプレッサーは魔素を圧縮して取り込めるよう改良したの。計算上じゃ、雛人形の力を吸い取ってもまだ容量はあるはず」

 嘘つけ。改造の間違いだろう。

 本当に搾取した魔素を変換して、別の目的に使うつもりだったんだな。
 ここでコンプレッサーに不備はないのか、実験の統制は取れてるのか、訊かなきゃならないトコなんだけど。


「……ハルちゃん。これでいいの?」

「はいッ、バッチリです。ありがとうございます、拓真さんッ!」


 肝心のセクター長がノリノリじゃ、何も言えませんがな。

 彼は先ほどから、弟'ズの身体に墨で文字を書き連ねていた。
 見た感じ、梵字っぽいけど。サンスクリット語は読めないわ……
 セクター長って仏教系の霊術士なのかしらん。




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