探求者たちの苦悩
幽霊かとビビッたことに気付いた遥香が説明してくれる。
「あぁ、助手よ。実験で使った計器類のデータを見てもらってたの」
あぁ、そういや新しい助手が入ったんだよね。
てっきり、ここにいるのは遥香ひとりだと思い込んでしまった。
室内の四方を囲む機械は、身の丈もある。
そこからひょっこりと背の高い男性が出てきた。
赤くなった額をさすりながら。
あぁ、と納得する。
あちこち計器を覗く内に、おでこをぶつけちゃったのね。
そんな微笑ましい仕草にも、遥香は眉をひそめるだけだった。
「ちょっと、雑賀。ここの測定器は、どれも貴重なんだから優しく扱ってよね」
「はい。すみません」
上司は叱責にも近い口調なのに、大して気にした風でもない。
クリップボードを片手に、近づいてくる。
その容貌に、うっと声が詰まりそうになった。
色の白い肌に、烏の濡れ羽色みたいな黒髪。
瞳の光沢は鈍いものの、薄い唇や鼻梁の形が整っていて、人形のような美しさがある。
おまけに、すらりとした長身だから白衣がよく似合う。