探求者たちの苦悩





 けど、所詮は年下だ。
 研究内容も金になるものとは限らない。
 稼げない男の相手なんて、する価値もない。


 そう自ら言い聞かせる。


 今の私には、全てが揃ってる。
 あの女と比べるまでもない。いや、私の方が上なのだ。

 彼女が好いていた男は、私のもので。
 もうすぐ結婚だってする。

 オカルト研究なんて胡散くさい仕事は辞めて、優雅な新婚生活を満喫するのだ。

 あんたは、せいぜい埃でもかぶって地味な研究を続けてることね。


 あぁ、ひとつだけ叶わない願い事があるかも。
 その惨めな負け犬っぷりを間近で見れないのが残念だわ。


 そう遠くない未来を想像し、ひとり胸中で笑みを浮かべる。


「俺たちも帰ろうか」

「ええ」


 最上の男に促され、帰途につく。

 これから遅い食事をとって、相談する内容なんて決まってる。


 想像できる幸せな未来。ひとつひとつ指折り数えるような気持ちでなぞる途中。
 隣を歩く彼が「あのさ」と改まった口調で話しかけてきた。




「第一研究所へ移るかもしれない」

「えッ……」


 唐突すぎる告白に、一瞬だけ理解が遅れた。





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