探求者たちの苦悩





 傷口に塩をすり込むように、耳元で囁く。

 悠真は身じろぎさえしない。
 ただ顔を逸らし、時が過ぎるのを待つだけ。昔からそうだ。



 世間一般での悠真の評価は、常に冷静沈着で寡黙で真面目。



 笑っちゃう。
 こいつは、ただのヘタレだ。


 欲しいものが欲しいと言えない、子供のまま。


 予想外の出来事が起きると、すぐに慌てるし、騒ぐし、不誠実だ。
 自分だけが被害者ぶって、何もしない。できない。


 わかっていても教えない。その方が面白いから。


 密着している肌は、とても熱い。
 混乱して、恥ずかしがってる。



 わたしは、そっと着ているワイシャツの襟元をくつろげた。
 鎖骨や胸元の跡を見せつけるために。




「ねぇ、何したの? わたしの全身を撫でて、舐め回したの? 違うなら、否定しなくちゃ。その口で、ひとつひとつ訂正してよ。教えてよ」



 悠真の視線が、わずかに泳いでる。

 はだけたシャツの胸元が気になって仕方ないようだ。



 胸中で嘲笑う。

 このむっつりスケベが。





< 166 / 169 >

この作品をシェア

pagetop