探求者たちの苦悩




「あ、すみません。気付きませんでした」


 と、雑賀クンが慌てた様子で謝ってくる。

 まさか、気付かれた?
 早すぎね?


 心の中を見透かされたのかと身構えれば、そっと指先が頬に触れてくる。


「えッ!?」

「動かないで。じっとしてください」



 ちょッ……近い。近い!

 雑賀クンは顔を覗き込み、親指の腹を頬に滑らせる。

 いきなり、何のサービス?


「すみません。女の人って嫌ですよね。もっと早く言えばよかったのに……」


 いや、それほどでもないけどね。
 てか、何の話なの?

 疑問に思うものの、鼓動が早くなっていく。期待してる?

 頬にも熱が集中して、気付かれたか冷や冷やだ。



「井上さんって、そのままでもきれいだから。仕草とかも可愛くて、ついつい」

「…………」


 ピシッと固まった。

 まず、突然の爆弾発言に驚いた。
 同時に、それとは別の意味にも気付いてしまう。


 彼が触れる指先は撫でるというより、擦ってるって感じ。


 そう。彼は、顔についた汚れを吹き取ってるのだ。




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