探求者たちの苦悩
しかし、私の受難はこれっぽっちで終わらなかった。
憂鬱な気分を奮い立たせて出勤すれば、今朝、上司がいきなり過ぎるカミングアウト。
『俺、結婚するわ』
煙草をふかしながら、そう告白したのは所属している13研究室の主(ぬし)。
今は直属の上司だが、元は五歳上の幼なじみでもあった。
行くとこないなら来いよと軽く誘われたものの、今にして思えば体のいい助手が欲しかっただけだろう。
ものすごい面倒くさがりで、毎日よく『帰りてー』と飽きもせず、ぼやく男である。
ほどほどに自分の尻を叩いて机に座らせ、研究を手伝ってくれるなら誰でもよかったに違いない。
ヤツの花嫁は、第三研究所所長の姉君らしい。
あの漂うだけしか能のない天然クラゲ男が政略結婚をするとも思えなかった。
つまり、仕返しか?
五年間ばかり、追いかけ回して研究させたとかいう……?(けど、それがおまえの仕事なんだよ)
じゃなければ、何の当てつけだ。この野郎。