探求者たちの苦悩
周囲にすれば、聞き分けがよくて手のかからない子とか評されたけど、わたしにすれば弟の将生以上に目障りな存在だった。
小さな頃から拓真さんにまとわりつき、ワガママ言って困らせるしか能のないガキなのだ。
歳が離れて生まれただけに、ご両親も拓真さんも可愛いがるしかなかったのだろう。
だから、現実という名のシビアな真実は、わたしが教えてやらねばならなかった。世の中、そんなに甘くないんだよという愛の鉄拳制裁だ。
ことあるごとに、悠真をいじめて泣かしてやった。
本人にも気付かれぬうちに、足を引っかけて転ばせ、つねって痣を作らせ、怪談を聞かせては夜中にひとりでトイレに行かせないようにした。
悠真も毎回、面白いようによく泣いた。
痛がって、怖がって、兄を求めて彷徨う瞬間、すかさずわたしが彼を抱き締める。
拓真さんは、誰にも渡さない。あの手も、腕も、胸も、わたしだけのもの。
弟にだって触らせるものか。だったら、わたし自身で慰めた方がましである。