青春に、寄り道中。



それでわたしは、家族の思い出があふれるこの町に住むことになったんだ。



小学校にあがってからお盆は毎年、家族4人でこの町に住む母方のおばあちゃん家に遊びに来ていた。

おばあちゃんがいたということもあり、お母さんとお父さんもケンカはしなかった。



だから1週間だけは毎日笑って、いろんなところに出かけたり、とっても楽しかったんだ。



この海だって、そう。

夏になるとたくさん重ねられた岩の向こうの海水浴場で、たくさん遊んだりしたっけ……。



目をつむるといろいろな記憶が頭に蘇ってきて、まぶたの裏にじわっと涙が溜まっているのがわかった。


ゆっくりと目を開けると、それと同時にぼろぼろと涙があふれた。

やっぱり海はまぶしくて、目を細める。



「……もう、大丈夫だよね」



そうつぶやいて、ひとりうなずいた。


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