青春に、寄り道中。
「高瀬くん勉強するんでしょ? だから、またあとでね」
なんだかうまく話せなくなりそうで、しかも高瀬くんの勉強の時間を減らせちゃうのが申し訳なくて、そう言った。
「うん。吉井さんも自主練がんばって」
高瀬くんはそう言うと、自転車に乗って去っていった。
あ……なんか風みたい。
というかピューッと吹く風に流されちゃったような感じがした。
それからわたしは河川敷で短いダッシュを何本かやって、家に向かってゆっくり走って帰った。
玄関のドアを開けると、美味しそうなにおいが漂っていた。
運動してるときはお腹がすいただなんて思わなかったけど、こういうにおいを嗅ぐだけで、お腹がぐうっと鳴った。
「おはよう、華純。やっぱり走りに行ってたのね」
「おはよう。 うん、自主練」
どうしてわかったんだろう。
やっぱりお母さんは、なんでもわかっちゃうんだろうな。