青春に、寄り道中。



「高瀬くん勉強するんでしょ? だから、またあとでね」



なんだかうまく話せなくなりそうで、しかも高瀬くんの勉強の時間を減らせちゃうのが申し訳なくて、そう言った。



「うん。吉井さんも自主練がんばって」



高瀬くんはそう言うと、自転車に乗って去っていった。

あ……なんか風みたい。
というかピューッと吹く風に流されちゃったような感じがした。



それからわたしは河川敷で短いダッシュを何本かやって、家に向かってゆっくり走って帰った。


玄関のドアを開けると、美味しそうなにおいが漂っていた。

運動してるときはお腹がすいただなんて思わなかったけど、こういうにおいを嗅ぐだけで、お腹がぐうっと鳴った。



「おはよう、華純。やっぱり走りに行ってたのね」

「おはよう。 うん、自主練」



どうしてわかったんだろう。
やっぱりお母さんは、なんでもわかっちゃうんだろうな。


< 101 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop