青春に、寄り道中。
「かすみんってバカだよね。なに考えてたの?」
「……なんでもないよ」
「その答え方されると、すっげえ気になるんだけど」
「だから、大したことじゃないって」
楽しそうに聞いてくる橋本くんに、わたしは顔を覆っていた手を外してキッと強くにらんでみせた。
自分が考えていた内容が恥ずかしくて、しかもそれをばれたくなくて思わず怒ったようにしてみたけど。
「あ、橋本くん、ごめん」
橋本くんがあまりにも驚いた顔をしていたから、すぐに顔の前で手を合わせて謝った。
「いいよ。 ってかさ、俺のこと“橋本くん”じゃなくて下の名前で呼んでよ」
「え? どうして?」
「だって俺、大抵の人に“皐”って呼ばれてるし、名字で呼ばれるの違和感があるんだよね」
そう言われて、おもわず笑ってしまった。
たしかに……橋本くんのことを名字で呼んでる人って見たことないなあ。
橋本くんって、やっぱりみんなから好かれているんだ。