青春に、寄り道中。



昨日は職会でいなかった先生の代わりに、セット走ではスターターとタイムを計る仕事を、高瀬くんは難なくこなしていた。

しかもみんなのタイムをミスすることなく計っていたし……。


やっぱり頭良いと、こういうのも得意なのかなあ。



「ねえ、高瀬くん」

「ん?」



マーカーを置きながら、場所を指示してくれる高瀬くんに声をかけてみた。



「美術部は平気なの?」

「うん、こっちが休みのときに向こうに顔だせばいいし」

「そうなんだ……」



いま一番聞きたかったことは、それじゃなかった。

でもなんかうまく聞ける気がしなくて。



だって、どうしてわざわざマネージャーを引き受けてくれたのかなんて、なんとなく聞きづらいに決まってる。

彼の世界に踏み込もうとしているわたしがいる。


……それが迷惑だって、わかっていても。


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