青春に、寄り道中。
「ははっ、ごめん冗談」
あまりにもいい笑顔でそう言うから、わたしも彼に合わせて「あはは」と笑った。
……でも、結構真剣な顔だったのにな。
本当に冗談? なんて思ったけど、まあいっか。
「そうだ。名前教えてください」
「高瀬蒼(たかせあお)。草冠に“倉”で、蒼」
「きれいな名前だね」
「ありがとう」
なんか……この町にぴったりだ。
ふとそう思った。
だけど彼は「女みたいな名前でしょ」ってちょっと困った顔で言った。
そんなことないと思って、わたしはすぐに首を横に振った。
「あ、わたしは吉井華純(よしいかすみ)」
彼と同じように漢字を言うと、高瀬くんは「吉井さんこそ、きれいな名前」と笑って言ってくれた。
……だけど、そんなことないんだ。
わたしは、この名前が大っ嫌いで。
こんなことお母さんには言えない。
でも、本当にいやだったんだ。