青春に、寄り道中。



思い出すだけで胸が苦しくなって、この名前をつけてくれたお母さんとお父さんに申し訳なくなる。



「吉井さん? どうかした?」



歩きながらわたしの顔を覗き込んでくる高瀬くんを見て我に返り、「なんでもない!」と平然を装ってそう答えた。


それにしても……高瀬くん、自転車を押しながらだからすごく歩きづらそう。



「高瀬くん、先に帰ってもいいよ」

「気にしないで」

「でも」

「いいから」



高瀬くんは、どうして今日初めて会った私なんかに優しくしてくれるんだろう。


自転車のカギを拾ってあげたから?
それとも、わたしが本当にさみしそうな悲しい顔をしていたから?



わからなくて悶々とひとり考えていると、高瀬くんが「そうだ」と口を開いた。


< 19 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop