青春に、寄り道中。



「そうじゃなくて、部活とか入んないの?」

「あ、わたしは陸上部に入りたいなあって思ってるんだ」



そう答えると、笑っていた彼はなぜか急に驚いた顔をした。

そして悲しい顔になった。
わたし……なにか変なこと言ったかな?



「……うちは弱小校だよ。 部員も5人しかいないんだ」

「そうなんだ。でも、いいの。陸上ができるなら」

「そんなに、陸上が好き?」



彼は足を止めてわたしの目をじっと見ながらそう聞いてきた。

わたしはそれに、真剣な顔をして「うん」と力強く答えた。



「そっか、がんばって」

「う、うん。 ありがとう!」



彼がなにを考えていたのかはわからないけど、わたしが笑うとまた笑顔を見せてくれた。



そのあとわたしがまっすぐ進む道を彼は左に行くと聞いて、そこでお別れしたんだ。



弱小校だからって、気にしない。
走れればいいんだ。


そして明日からの新しい学校生活、がんばらなきゃと胸に決めた。






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