青春に、寄り道中。
だから春の大会で応援しにきてくれた人に、少しでもかっこいい姿を見せられるように、いまがんばろう。
あらためて、そう心に決めた。
「蒼くんね、本当にめちゃくちゃ速いんだよ!」
すると沙莉は、体をわたしのほうに向けて、まるで自分のことみたいに、声を大きくしながらそう言ってきた。
「どれくらい速いの?」
「え? うーん……11秒前半とかだったっけなあ」
腕を組んで眉間にしわを寄せて、悩みながらそう言ったけれど、「あ、やっぱり10秒台だったかも」と首を傾げた。
「それって中学のときの結果でしょ?」
「うん、そうだよ」
それならかなり、速いと思う。
なんだかもっと楽しみになってきた。
怪我をしてからだから1年以上走っていないことになるけど、それでもきっと変わらず速いんだろうなあ。