青春に、寄り道中。
高瀬くんの色素の薄い茶色い瞳には、いつだって沙莉しか映ってないのに……。
そう考えると、胸がキシキシと痛んだ。
すぐにドキドキしたりすぐに痛んだり、わたしの意思とは関係なく、胸は正直な感情を表すんだ。
好きなんて、やめたい。
だってこんなにも泣きそうになるなら、もうやめたいよ……。
「かすみん?」
不思議そうにわたしを見てくる沙莉に呼ばれて、我に返った。
「じゃあ……もどるね! またね」
「うん、がんばってね」
「ありがとう!」
沙莉に笑顔で手を振ると、沙莉は優しく笑って「バイバイ」と帰って行った。
そしてわたしは、急いで部室へと走った。
そこでスマホをバッグにしまい、今度はみんなのところへともどる。
すると若菜に「遅いよ〜」と言われ、少し息が上がりながらも、残りの2セットをちゃっちゃと終わらせた。