青春に、寄り道中。
「うん。 蒼くん、ありがとう」
「ううん。またなにかされたら言って」
「わかった」
沙莉がそううなずくと、高瀬くんはわたしと沙莉に向けて「じゃあ」と言って3組の教室の中へ行った。
わたしたちも教室に入ろうと沙莉に声をかけたけれど、沙莉は頬を赤くしてぼーっと立っていた。
「沙莉?」
「あっ、ご、ごめん」
だけどもう一度名前を呼ぶと、沙莉は我に返った様子であわててそう言った。
「かっこよかったね、高瀬くん」
「……うん。かっこよかった」
そう言って、さらに頬を赤く染めた。
なんかうらやましいなあ……。
だって沙莉を助けたときの高瀬くん、本当にヒーローみたいでかっこよかったんだもん。
――次の日から、沙莉と高瀬くんのことについて言う人はいなくなっていた。
*
.
☆