青春に、寄り道中。



「じゃあ、また明日ね」

「待って。送るよ」

「でも、湯冷めしちゃうよ」



スウェット姿で髪も濡れたままだし、それじゃあ風邪をひいてしまいそうで、送ってもらうのは気がひける。


そう思って帰ろうとすると、「ちょっと待ってて」とまた引き止められたかと思ったら、高瀬くんは家の中へもどった。


どうしたのかなあと思っていると、高瀬くんは黒いジャンパーを着てまた外に出てきた。



「これならいい?」

「え?あ、うん……」

「行こっか」



そう言って高瀬くんは、自転車のサドルを少し上げてから、またがった。

そして「乗って」と優しい顔をして言ったんだ。



最初は躊躇したけれど、わたしはうなずいて後ろの荷台にまたがった。


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