青春に、寄り道中。
「掴まって」
「うん」
そう言われてジャンパーを少し掴んだけれど、ダウン素材だからかツルツルすべてうまく掴めなかった。
「ちゃんと掴まんないと、落ちるよ」
「う……うん」
そう言われて、「失礼します」と小さな声で言ってから、高瀬くんの腰にソッと手を回した。
なにこれ、すごく恥ずかしい……。
そう思ってるわたしのことなんて知らない高瀬くんは、ゆっくりと自転車をこぎ始めた。
高瀬くんの体温を感じるほどに近い距離。
しかもこれ……わたしが後ろから抱きしめているみたい。
風に乗って、高瀬くんのシャンプーの優しい香りが鼻をかすめた。
……近すぎて、やっぱり恥ずかしい。
しかも、気温も低くて寒いはずなのに、頬だけが熱い。