青春に、寄り道中。
気がつけばアパートの前に着いていて、わたしは荷台から降りた。
……そういえば、晩ごはんどうしよう。
家になにか食材とかあったっけ。
「吉井さん?どうかした?」
「ううん、なんでもないよ。 送ってくれてありがとう」
そう言ったのに、高瀬くんは帰ることなく、わたしの顔をじーっと見た。
「……お母さん、本当に平気だった?」
「え?う、うん、平気だったよ」
そう言って口を閉じてから、「でも」とまた口を開いた。
「……少しの間、入院するんだって。だからちょっとさみしいな〜……なんてね」
「あはは」と笑ってみせたけど、高瀬くんは真剣な目でまっすぐにわたしのことを見てくる。
色素の薄い、茶色い瞳。
それはやっぱり、なんだかわからないけど逸らせなくて。