青春に、寄り道中。
そんな様子を見て、ほっと胸をなでおろす。
「吉井の席は、窓側の一番後ろな」
「はい」
「教科書とかまだ届いてないみたいだから、大谷(おおたに)が見せてやれ」
「わかりました」
先生がそう言うと、わたしの席の隣の女の子がにっこり笑顔でそう言った。
うつむきがちに机と机の間の通路を歩いて、自分の席へと向かう。
そして自分の席に着くと隣から視線を感じて、ちらっと見ると大谷さんとぱちっと目があった。
「吉井さん、よろしくね。私は大谷沙莉(さいり)」
「うん、よろしくね」
柔らかい雰囲気でしかも可愛らしい顔立ちの大谷さん。
優しそうな子が隣の席でよかったな。
そんな彼女が差し出してきた右手に、自分の右手を重ねて握手をした。