青春に、寄り道中。



「お、おい! 吉井!」



わたしの名前を呼ぶ五十嵐くんの声が後ろから聞こえてきたけれど、わたしは急いでグラウンドから出て正門に向かった。


そのスピードは、ほぼ全速力。
それほど早く、歩夢のもとに向かいたかった。



「歩夢!!」

「うおっ……、相変わらず速ぇな」



歩夢のギリギリ前で止まると、歩夢は少し苦笑いを浮かべてそう言った。



「あはは、褒めてくれてるの?」

「うざ」

「ちょっと、久しぶりに会ったんだからそんなこと言わないでよ」



声も低いし背も高いし、顔は歩夢なのに歩夢じゃないみたいで気持ち悪い。

歩夢が中1のときはもっと優しい口調だったのに、ここ何年かで性格もちょっと変わったみたい。


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