青春に、寄り道中。



「吉井さん、もう部活始まるよ」

「あ、うん。いま行く……」



とは言ったものの、なんだか名残惜しい。


でも明日は土曜日だから、きっと歩夢は家に泊まっていくんだろうな。
また家に帰ったら、話せるよね。


そう思っていたけれど。



「また、母さんと華純に会いにくるよ。長期休みとかに」



歩夢はちょっとさみしそうな顔で、そうつぶやいた。



「え? もう帰るの?」

「うん」

「泊まっていけばいいのに……」

「今日ここに来たこと、父さんには言ってねえからさ」



そうだったんだ……。


っていうことは、お金とかはぜんぶ自分で出してここまで来たってこと?
きっと、すごく高いのに。


中学生の歩夢でさえ、自分ひとりでここまで会いに来てくれたんだ。
だから今度は、わたしが会いに行こう。


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