青春に、寄り道中。



「陸上が好きなんだろ」

「うん、好き」

「大会があったら、見にくるから」

「あはは、なにそれ。彼氏みたい」



なんて冗談を言うと、歩夢は眉間にシワを寄せながら「きも」と返してきた。

口の悪い歩夢に苦笑いを浮かべながらも、「冗談だよ、ありがとう」と言った。



「お父さんに、よろしくね」

「うん。 姉ちゃんも、がんばれ」

「うん、がんばるね!」



歩夢は小学校を卒業するまでは、わたしのことをいまみたいに「姉ちゃん」って呼んでたなあ。

離婚してからは、名前を呼び捨てにされるようになったけど。



なんか、懐かしくなって泣きそう……。



「じゃあ」

「……うん、ばいばい、歩夢」



歩夢に手を振りながらそう告げて、わたしは急いでグラウンドへともどった。

そしてフェンス越しに正門を見てみたけど、もうそこに歩夢の姿はなかった。


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