青春に、寄り道中。



「ジョグ行きまーす」という声に返事をして、みんなに小走りでついていく。


今日グラウンドを使うのは陸上部だけ。
空は雲ひとつないほど晴れていて、これは絶好の部活日和……って感じだなあ。



「そういえば、あれはだれだったの?」



なんて、隣を走る若菜が興味津々にそう聞いてきた。



「さっきの? 弟だよ」

「あれが弟!?全然似てないね」

「あはは、よく見えたね」

「だって、だれか気になったし」



それでも、グラウンドから正門に立つ人の顔なんて、ふつう見えないでしょ……。



「吉井さん、うれしそうだね」

「うん、うれしいに決まってる!」



前を走っていた高瀬くんが振り向きながらそう声をかけてきて、わたしはにっこり笑いながらそう返した。



地区大会で優勝して、県大会には出場したいな。


それで、風になるんだ。
自分の納得できる走りを、するんだ――。






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