青春に、寄り道中。
「ちょっと皐(さつき)くん?なに言ってるの。だって名字……」
“皐くん”と呼ばれた彼が言う人とわたしの名字がちがうことを、近くにいた女の子が指摘したけれど。
すぐにその子も彼も「もしかして」というような顔になった。
「あはは、わたしのおばあちゃん家この町にあるの。だから遊んだことあるかもしれないね」
そう笑って言ったあとに、小さな声で「それにね、わたしの親は離婚しちゃったの」と付け足した。
わたしのそんな言葉に、周りにいた子たちは口を閉じた。
笑ってればこの胸の苦しさもごまかせるかなあなんて考えたけど、彼らの反応を見て余計にキシキシと痛んでくる。
ぎゅうっと目を閉じて勢いよく立ち上がり、「ごめん」と消え入りそうな声でつぶやいて、うつむきながら教室を走り去った。