青春に、寄り道中。



ちらっと若菜のことを見ると、若菜は着替える手を止めて不思議そうにわたしのことを見ていた。



「なーに?」

「えっと……。 怒らないで聞いてくれる?」

「うん」



最初にそんなことを言うのはずるいかな……。


若菜は語尾にはてなマークをつけそうなくらい不思議そうに首をかしげながらも、うなずいた。



「抜け駆けって、ずるいよね」

「え? うーんと、なんのこと?」

「……好きな人に、告白すること」



わたしのそのひとことに、着替え始めた若菜の手が、また止まった。



「わたし、沙莉に言ったの、この気持ち。沙莉は『お互いにがんばろう』って言ってくれたけど……やっぱり、ずるいのかな」



シーンとした空気の中、そう話しているのは胸が苦しくなった。


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