青春に、寄り道中。
大丈夫だよ、わたし。落ち着くんだ。
まだ、予選だから、練習くらいだと思わなきゃ。
じゃないと、決勝まで体力なんて持たないし……。
決勝に続く走りを、すればいい。
スタブロの後ろに立ち、ゴールを見据えながら大きく深呼吸をする。
「On your marks(オン・ユア・マークス).……」
「お願いします!」
スターターのその声に返事をし、ゆっくりとスタートの姿勢になる。
両方の足をブロックにつけて、右ひざを地面につけてからまた、ゴールを見つめる。
そして、真っ白なスタートラインギリギリに両手を添える。
ゆっくりと、重心を前に移動させる。
あとは、待つだけ――。
「……Set(セット).」
――パァアンッ!!
その音とともに、勢いよく飛び出す。
耳に届く音は、風の音だけ。
走れ、走れ、走れ……。