青春に、寄り道中。
――一番最初にゴールしたのは、紛れもなく自分だった。
ゴール付近に置いてあるタイムは、12秒8だった。
自分が走ったレーンに一礼をしたあと、荷物を置いたスタートまでバックストレートを歩いてもどろうとしたとき。
「華純!」と後ろから名前を呼ばれて、振り返った。
「あ、若菜」
「おつかれ、華純」
「ありがとう。若菜も、ね」
呼吸を整えながら、そう言った。
わたしの3つくらい前の組で走った若菜は、すでにユニフォームのうえに部活着を着ていた。
そんな若菜の手には、わたしがスタートに置いてきたくつや部活着があった。
「持ってきてくれたの?」
「ううん、あたしじゃない」
「じゃあ、だれ?」
女子の前にやった男子のだれかかなあ……。
そう思っていたら、若菜はにっこり笑って「高瀬だよ」と答えた。