青春に、寄り道中。



――キーンコーン……。



このチャイムって、もしかして始業式開始のチャイム?


どうしよう、そう思ってくるりと振り返ると、そこにはまだ高瀬くんの姿があった。



「……あの、始業式」

「大丈夫だよ。それに、そんな腫れた目じゃ行きたくないでしょ」

「でも、高瀬くんのこと巻き込んじゃったね……。ごめん」

「謝ることないよ。俺は自分の意思でここにいるんだし」



高瀬くんの柔らかい笑顔を見て、「ありがとう」と小さな声で言った。


高瀬くんって、すごい優しい人。
会ってまだ2日目なのに、彼の人柄が良いことはもうわかった。



「ねえ、わたしの話……聞いてくれる?」



だからなのかな。
自然とその言葉が口から出たんだ。

それは話題がこれ以外に見つからなかったからかもしれない。



だけど心の中で叫んでいただけで、まだだれにも話したことがない、この思いをずっとだれかに話したかった。

だれかにわかってほしかった。

わたしは、だれかに「大丈夫だよ」とでも言って慰めてほしかったのかな……。


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