青春に、寄り道中。
高瀬くんも集中してるだろうから、お互いにここにきてからはひとことも言葉を交わしていない。
「蒼」
そんなとき、強豪校の赤いユニフォームを着た男の子が、高瀬くんの名前を呼んだ。
この人が、高瀬くんの言っていた……。
「久しぶりだな、海斗(かいと)」
中津(なかつ)海斗くんだ。
彼もまた余裕で予選、準決を進んでここまでやってきた。
だけど予選でも準決でも彼らは同じ組になることがなく、ようやくこの決勝で戦えるみたい。
高瀬くんは4レーンで、この人はとなりの5レーン。
どっちが勝つか、わたしまでドキドキしてくる。
「まだ陸上を続けてるとは思わなかったよ。ぜってーにおまえには負けねえけど」
「俺も負けない」
ふたりの間にはバチバチと火花が散っていて、ちょっと怖い。
わたしはもちろん、高瀬くんに勝ってほしい、ぜったいに。