青春に、寄り道中。
何年ぶりにもどってきたかな、この町に。
歩きにくいヒールのあるサンダルを手に持ち、砂浜に足あとをつけながら、ゆっくりと歩く。
――高校を卒業した春から、3年。
今年の初めに成人式も終え、わたしは周りからオトナと認められる歳になった。
いまはここを出てひとり暮らしをして、東京にある大学に通っているけれど、彼はここの隣の市にある大学に進んだ。
春休みのいま、わたしは半年ぶりくらいに彼に会いに来た。
「華純」
久しぶりに聞く声に名前を呼ばれ、足を止めてゆっくりと振り返る。
「久しぶり」
「久しぶりだね、蒼」
わたしは辞めてしまったけど、蒼はまだ陸上を続けている。
周りには「高望み」なんてバカにされたらしいけど。
4年後の2020年に行われる東京オリンピックに出るっていう目標を掲げて、がんばっているんだ。
だからわたしはいまもずっと、蒼のことを応援し続けている。