青春に、寄り道中。
・ 彼の特別な笑顔
学校が始まって1週間。
始業式の翌日から授業も始まり、隣の席の大谷さんと机をくっつけて教科書を見せてもらう毎日。
大谷さんは優しいから快く見せてくれるけど、正直すっごい申し訳ない。
だって、授業も受けづらいだろうし……。
なんて思いながらも今日も午前の授業が終わって、ひとり机の上にお弁当を広げようとしていると。
「吉井さんっ」
「……ん? なに?」
大谷さんに声をかけられてそっちを見ると、いつもどおりにこにこ笑っていた。
「お昼、一緒に食べない?」
「え? でも……」
「みんなに聞いたら、『いっしょに食べてもいい』って言ってたの」
“みんな”ってだれだろう。
でも大谷さんはお昼になるとお弁当を持って教室から出て行くから、その“みんな”といっしょにご飯を食べているんだろうな。