青春に、寄り道中。
友だちの名前を呼ぶのって久しぶり。
……というかきっと、これはふつうのことなんだ。
だけどあの高校に入ってからの1年半はふつうじゃなかったから。
だから、変にうれしくてにやついちゃうよ。
「じゃあ俺は“かすみん”って呼ぶよ」
「えっ?」
「あははっ」と笑う橋本くんの言葉に、バカみたいに驚いてしまった。
そんな橋本くんは「冗談、冗談」とか笑っているけれど……。
もう、びっくりした。
男の子に下の名前で、しかもそれをあだ名で呼ばれたことなんてなくて、だからすごいびっくりしたよ。
「皐くんずるい! やっぱりわたしも、“かすみん”って呼びたい」
「あははっ、うん。 いいよ!」
沙莉の目があまりにも必死そうだったから、また笑っちゃう。