青春に、寄り道中。



「ちょ、ちょっと高瀬くん……!」



そう言いながら距離を空けると、高瀬くんは温かく笑ってわたしのことを見ていた。


……そういう意味じゃないっていうのはわかってるけど、「好きだよ」なんて言われると不覚にもドキドキしちゃうよ。


そんな自分が恥ずかしくて、顔がほてる。



「じゃあね」

「……うん」



そう言葉を交わして、3組の教室に高瀬くんは入っていった。

あ、高瀬くんって隣のクラスだったんだ。


わたしが教室に入るころにはすでに沙莉は席についていて、「蒼くんとなに話してたの?」と聞いてきた。



「ちょっと、いろいろと……」

「ふたりって仲良いんだね。不思議。 蒼くんがわたしと若菜以外の女の子と話してるの見たの、久しぶりだよ」



言葉をにごすと、沙莉は「ふふ」と可愛らしく笑いながらそう言った。


どうして高瀬くんは女の子と話さないのかな。
ふつうに優しい人なのに。


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