青春に、寄り道中。
SHRが終わった放課後、わたしは沙莉と教室で別れて帰ろうとしていた。
廊下を歩いて、階段を下りていると。
前に見覚えのある背中を見つけた。
そんなとき、わたしの横を女の子が急いで階段を駆け下りて、その背中の男の子を引き止めた。
「高瀬くんっ! ちょっと……いいかな」
そんな女の子の大きな声に、周りの子もちらっとその子を見た。
そして、くるりと振り返った彼の表情はどこか冷たくて、わたしの知っているものじゃなかった。
ふだんはあんな感じなんだ。
なんか、初めて声をかけられたときみたいな雰囲気。
そんなふたりを横目に通り過ぎようとすると、ふいにパシッと腕を掴まれて反射的に「えっ?」という声を挙げながらも、足を止めた。
「……俺、ちょっとこの人に用事あるから、無理」
「吉井さんに?」
え?用事?
というかわたし、高瀬くんとなにか約束とかしたっけ?