青春に、寄り道中。
高瀬くんの言葉がわけわからなくてぽかーんとしていると、女の子は不審そうに私のことを見てきた。
あ、この子……同じクラスの沢村(さわむら)さんだ。
ちょっと派手な感じで、得意ではないタイプ。
「うん、沙莉のことで」
高瀬くんは沢村さんになにも言わせずに、私の腕を引いて階段をスタスタと下りていく。
それを周りの人にじろじろと見られて、しかもこの制服だしなおさら目立って恥ずかしい。
「あの、高瀬くん……」
いまだにわたしの手首を掴んで階段を下りる高瀬くんに声をかけると、ゆっくりと止まってうしろを振り返った。
「ん?」
「いや、あの、用事ってなに?」
周りに聞こえないような小さな声で聞いてみる。
声は雑音で聞こえてはいないみたいだけど、階段の真ん中で止まるわたしたちはちらちらと周りから視線を感じる。