青春に、寄り道中。
「高校生になってから美術部に入ったの?」
ちょっと気になって聞いてみたけど、高瀬くんの顔が少し曇ったのがわかって、それを聞いたことを後悔した。
わたしは自分の世界にだれかがズカズカと足を踏み入れてくるのはいやなくせに、他人の世界にはすぐに踏み込んじゃう。
人にはひとつやふたつ、聞かれたくないことだってあるのにね。
わたしだって、そりゃあもちろん、あるし。
……でも、高瀬くんにはいくつか話しちゃったけどね。
「あっ!こんな時間!」
「……え?」
「ほら、もうすぐ予鈴鳴っちゃうよ。もどろう」
さすがに無理やり過ぎたかな?
でも、答えたくないことを答えさせちゃうのは、悪いと思ったんだ。
「そうだね、もどろう」
そんな高瀬くんの言葉を聞いて、美術室を出る。