青春に、寄り道中。
「なにを描いてるの?」
「この町、かな」
なにか描きかけのキャンバスをイーゼルに立てかけて、その前にイスを持ってきて座った高瀬くん。
それを見て、わたしも端に積み重ねられたイスをひとつ取って、近くに置いて座った。
「部員って、何人いるの?」
「2年が俺を含めてふたり、1年もふたりだよ」
「……少ないんだね」
「まあ文化部だし、そんなもんだよ」
笑いながらそう言った彼は、おもむろに立ち上がると近くの机の上にあるパレットに絵の具を出し始めた。
邪魔しないほうがいいよね。
そう思って、静かに高瀬くんの様子を見る。
あんまり焼けてない白い肌と、きれいな細くて長い指。
そんな彼の手をぼーっと目で追う。
彼が手に持った筆は、真っ白なキャンバスをいろんな色で染めていく。