青春に、寄り道中。



真剣な彼の横顔と彼が動かす手を、行ったり来たり目で追っていくうちに、気がつけばここに来てから2時間は経っていた。


そんなに時間が経ってたんだ……。
高瀬くんの描く絵はとってもすてきで、思わず見とれていた。


そんな高瀬くんは「はあ」と一息吐いてから筆をパレットの上に置いた。

そしてさっきとはちがう柔らかい表紙を私に見せてきた。



「今日はこれで終わり」

「そうなの?」

「うん。 締め切りは今週末だし、明日で完成させるから」



彼はパレットを洗うために立ち上がった。
わたしもイスから立ち上がって、キャンバスの前へと移動する。



ところどころまだ色が塗られていないところはあるけど、昨日見た高瀬くんが初めて描いた絵とは迫力がちがかった。

同じような構図だけど、こっちのほうが断然上手だと思う。


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