鬼姫伝説 Ⅱ
吹き飛んだ。
本当にその表現が正しい。
一瞬にして私を抑えつけていた重みがなくなり、暗闇に落ちて行った心が戻ってきた気がした。
助けて・・・くれた・・・。
「貴様ら、ここが俺たちの縄張りと知ってのことか?」
「な、な、お、鬼だ!化け物だ!」
「ぎぃやああああ!」
闇をつんざく雄叫びが。
化け物と彼を呼ぶ禍々しい声。
鬼羅は、そんな事気にした様子もなくただ怒りに爪を立てる。
「き、鬼羅!ダメ!」
思わず、止めていた。
ビクッと動かそうとしていた体を止めた鬼羅。
その瞬間を見逃さず、男たちは無様に躓きながら逃げて行った。
「なぜとめた」
「・・・だって」
殺してしまいそうだった。
その手を、血で染めたくなかった。