鬼姫伝説 Ⅱ
「なにを笑ってる?」
「え?別に」
無意識のうちに笑っていたらしい琉鬼は、指摘されると一層笑顔をその顔に縫い付け鬼羅に告げた。
怪訝そうな鬼羅の表情を見る事すら、今は幸せと思う。
そうしていると、小屋の戸が再び開かれた。
千菜が起きてきたんだろう。
千菜の分の魚を串にさし火にかざす。
「おはよう、千菜ちゃん。もうすぐ朝ごはんできるよー」
琉鬼がそう声をかけるが、千菜はそれに応えることなくその扉の前に立ちすくんでいる。
まだ寝起きで、ボーッとしているのだろうかと気にせず鬼羅も琉鬼の向かい側に腰を下ろした。
「・・・どうした、早く来い」
それでも、いつまでたっても動かない千菜にしびれを切らし鬼羅が顔を向け呼ぶ。
俯いていた千菜が顔をあげると、その瞳には大粒の涙がうかんでいた。
「ど、どうしたの、千菜ちゃん!?」
「ち、千菜・・・?」
それに驚き声を上げる。
昨日から、不安定ではあったが突然に泣き出すなど戸惑いが隠せない。