鬼姫伝説 Ⅱ



「鬼羅・・・」



いつまでも黙ったままであった千菜がようやく声を発する。
絞り出すような声で鬼羅を呼んだ。



「どうした」

「・・・ああ・・・・鬼羅・・・鬼羅・・・」



ポロポロと大粒の涙を零しながら、鬼羅の名をなおも呼び続ける。
様子がおかしい。
鬼羅が様子のおかしい千菜の側に行く。



その途端に、千菜が鬼羅に抱きついた。



「ち、千菜・・・?」

「鬼羅・・・、会いたかった・・・、とても、とても、会いたかったの・・・」




強く強く抱きしめる。
鬼羅は戸惑いその手をどうするべきかわからなかった。



「千菜、どうした・・・。何か、あったのか?」

「ああ、やめて。他の女の名前を呼ぶのなんて聞きたくないわ」

「他・・・?」

「お願い・・・、私の名を・・・名を呼んで」





愛おしそうに鬼羅の胸に頬を摺り寄せる。




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